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2003年03月25日

3月23〜29日 南九州

去年から始まった神話の舞台を訪ねるシリーズの撮影で宮崎、鹿児島へ。
高千穂峡から人吉を通ってえびの高原へ。
どんより暗い高千穂峡がよかった。猪が神の使いであり、恐れの対象でもあるという宮司さんの話が面白かった。映画「もののけ姫」の猪の存在は山の民と里の民双方にとっての猪への関係に忠実だと知る。そういえば去年訪れた日南のある神社の新撰は猪。拝殿に15頭の猪の生首が並ぶ様は凄かった。直会のシシ汁は美味だったた。
 霧島、高千穂岳から国分へ。
 霧島神宮は色鮮やかな南方系の意匠。琉球、台湾、フィリピンなど南方と交易があった島津藩の地の特色と宮司さんに聴く。それにしても境内に樹齢800年1000年クラスの欅や杉を度々見かける。それらの木の貫録ある姿は30分位見ていても見飽きない。大きな枝と枝の間に小さな茂みが出来ていてそこが小さな「世界」のよう。
 表情薩摩半島の笠沙から川内から再び国分へ。
 リアス式海岸の笠沙は歴史的にずっと密貿易の地だったとか。数年前に史上最大量の大麻の密輸が見つかったそうだ。(北朝鮮から?)何となく「地の果て」の感。荒天の風景が似合う。数年前まで友人のKさんは家族と別れここで独り暮らしていたのを思い出して感慨深いものがあった。濃い霞は黄砂だと知る。
高千穂岳を撮るために韓国岳へ登る。
 1700mの韓国岳へ完全な登山。山頂から種子島から打ち上げた人口衛星を見る。神話の天孫降臨の地から衛星の打ち上げを見るというのも不思議な体験。関係ないけどNHKの朝ドラ「まんてん」が最終回。
宮崎〜青島宮〜鵜戸神社
 青島で食べた昼飯の冷汁が最高にうまかった。鵜戸神社は神仏混淆の面影を残す。霧島もそうだったけど修験の場であり権現という信仰が今もある。それにしても明治政府はなんで廃仏棄釈なんてしてしまったのか。
 7日間でレンタカーの距離計は1500KMに。疲れた。

投稿者 Ken Kitano : 23:30

2003年03月22日

3月22日 ORITOさんライブ。高円寺JIROKICHI

ご近所のソウルシンガーORITOさんのライブに初めて行く。ORITOさんは玉川上水で散歩しているときによく会う。たまにうちに来て飲む。以前J-WAVEに出ているのを聴いてかっこよかった。ライブハウスに着くと階段まで立ち見の人。やっぱファンが多いんだ。やっとカウンターでお金を払ってR&Bなのに赤ワインを飲みながら聴く。明るくていいステージだった。楽しませる音楽に徹している感じがしてよかった。普段会うORITOさんとは別人のようだった。今度あったらお礼と感想を言おう。

投稿者 Ken Kitano : 23:31

2003年03月21日

3月20〜21日 滋賀県近江

去年から始まった神社の連載で近江神宮へ。かつて近江京があった地に神宮が建てられたのは昭和に入ってから。従って神社そのものには時間を感じさせるものはあまりない。ただ、京都から山を越えて近江に抜けたとき、眼下に拡がる広大な琵琶湖の明るさはいつ来ても面白い。さらに琵琶湖の先ににうっすら連なる白い山の連なりを見ていると、その先へ先へと行ってみたくなる衝動を覚える。狭い盆地の風水都市京都から一転明るさと広がりの世界へ。その分水嶺に比叡山がある。比叡山はいつきても怖い。

投稿者 Ken Kitano : 23:32

2003年03月13日

2月13日 シアターコクーン「ニンゲン御破産」

 松尾スズキの芝居は「キレイ」以来。今回は中村勘九郎が主演するということもあって随分前から話題になっていた。はっきりいって貧乏な状況で私には芝居を観る経済的余裕はないのだが、雑誌の取材で稽古を撮影させていただいた時、強烈に面白くて、以来楽しみにしていたのだ。
 今回は幕末が舞台の時代劇で3時間半の大作だ。幕末という時代は面白い時代だ。現在と似ていることも多い。で、芝居だが、やっぱり面白かった。いい演劇に出会うと観ているうちに何か、もしかしたらたった今から世界が変わってゆくんじゃないか、みたいな感覚に襲われることがとあるけれど、松尾スズキの芝居はどんどん現実の世界に戻され、というか現実のただ中にいるということがリアル感じられてくる。まだ公演中なので詳しく書かないけど、特に最後に客席のあんたたちの現実こそ演劇的だし、リアルに見る対象なんだよ。みたいな幕切れはなんだか凄くよかった。片桐はいりさんや阿部サダヲさんらの異形の者たちの様もいつもながらよかった。それにしても松尾さんは稽古場でも思ったけど立っているだけで足の形だとかそこはかとなく面白い。こうゆう細かい面白さって大事だ。今の時代、右とか左とかわけても何も言えてないし、大きく何でも含めて言えることなんて無くて、細かいことにしかリアリティーは宿らないのだ。
 客層は安い服着ているけど頑張って来てるフリーター系底辺寄りのひとと、高い服着た業界勝ち組系のひとが入り混じった文化村の夜。

投稿者 Ken Kitano : 23:38

2003年03月10日

3月10日 頭山

友人の写真家佐藤信太郎が出しているグループ展「一坪展20周年展」をガーディアンガーデンに見に行く。新作のランドスケープは強くてキレイだった。その後アカデミー賞にノミネートされた短編アニメ「頭山」の試写を観る。日曜日のTBSラジオ伊集院光「日曜日の秘密基地」で最近話題になっている。思っていたよりも、意外なくらい短い作品だった。語りと音楽(三味線)が浪曲の国本武春だった。これがよかった。 他にも不条理落語を国本先生とのコンビでアニメ化してもらえないだろうか。「水棲」という作品も面白かった。「頭山」は他の短編作品と一緒に「ヤマムラアニメーション図鑑vol.1」のなかで来月ユーロスペースでロードショーされる。

投稿者 Ken Kitano : 23:32

2003年03月08日

3月8日 World peace now!日比谷5万人。our face取材&デモ初参加。

 1時半ころ日比谷公園に着く。風が少し冷たいが快晴。すでにかなり人がいる。
来週以降戦争が始まるかどうかわからないけれど、今日ここに集まった人々のことをour faceの肖像としてインタビューテキストと共に残したいと思う。
 撮影とインタビュー開始。こうゆう集会デモの取材は初めて。誰に声をかけるか迷う。「ワタシ全身反戦意識デス!」みたいな人は声をかけずらい。「いったいアナタの仕事はイラクの人たちにとって何になるんです!?」とか詰問されそうな気がする。背中の丸い労働団体系のおじさんおばさんたちも近寄りがたい。このひとたちは全体に黒っぽい。明るい感じでアピールしているひとが声をかけやすい。こうゆうデモはアピールしに来ているんだから出来るだけおしゃれをして来るべきだと知る。銀座だし。それか面白い格好。
 取材してみて意外だったのは「日本政府が米支持をするのも現実的には仕方がない」と言うひとが多かったことだ。政府が言えないかわりに自分が言わなければと思ったというひとが結構いた。子供にも頼りにされていない政府。批判の対象の大半はブッシュである。今回は彼の周りの狂信的な原理主義者たちがしかけている戦争だから構図として分かり易いといえるかもしれない。世界的にも批判の声が大勢であるし。遅かれ早かれアメリカは孤立してゆくのでは。それにしてもアメリカやヨーロッパの知識人や表現者は反応してるんだろうか?メディア統制があるのかあまり伝わってこない。NHKも会長が変わってから現代もののドキュメンタリーが減ったと聞く。
 3時頃から行進がスタートしたらしいが、信号の合間に少しづつ出発しているので列がなかなか動かない。意最後に列が公園を出たのは6時半を過ぎていたそうだ。列が一車線で細いのも原因だろう。あまりにも進まないので新橋方向に先回りして写真を撮る。撮っていたら知りあいでTVジャーナリストのOさんたちが来たので合流する。新橋からリクルートの前を通って有楽町へ進む。案外あっさり終わった。不景気の銀座は人気が少ない。車道から歩道側を見るのが面白かった。

 ゴール後地鶏料理屋で飲む。数年前NHKで劣化ウラン弾の特集番組を作ったTさん、舞台カメラマンのIさん夫妻、Oさん親子、エジプトでガイドの仕事をしていたがルクソールの銃撃事件で失職したプータローのケンちゃんらと。Iさんとは知りあいに共通の編集者、ライターがいることが判明。Tさんは湾岸戦争で劣化ウラン弾で被爆をした米兵とその家族をワシントンでたくさん取材していたのでとても詳しい。いろいろ質問する。米軍は今回も劣化ウラン弾を使うと明言しているそうだ。劣化ウランは爆発すると粉になり体内に入るので病気との因果関係を証明しにくいそうだ。しかし使われた地域では奇形児、白血病の発生率は著しく高い。日本の戦費保証、復興支援に国民一人当たり4万円とも14万円とも言われているそうだ。そんな大金我が家には払えない。だれか今戦争を止めてくれるならその人に2万円くらいなら払ってもいい気がする。

投稿者 Ken Kitano : 23:33

2003年03月07日

3月7日 空海ブーム

 昼間は暗室。夕方から空海本を読む。高野山から帰ってから空海ブームが続いている。「空海の思想について」(梅原猛著)、「空海の風景」(司馬遼太郎著)。面白い。ニュース23を見る。珍しく明日のWorld peace now!デモのことを番組で事前に話していた。SMAPが生出演していた。番組として反イラク戦のメッセージを曲に結びつけていた印象。もっとはっきり言えばいいのに。木村拓哉は子供もいるんだし。でもよく出たなという気もする。広島の人文字のニュースで群衆のアップの映像にライターの神足裕司さんが一瞬映っていた。明日のデモのことは昨日の新聞広告も目立っていた。10万人くらい集まるかもしれない。

投稿者 Ken Kitano : 23:34

2003年03月05日

3月5日 暗室

暗室作業。ラジオのニューズでイギリスのメディアが来週末にもイラク攻撃が始まる可能性があると報じたことを伝える。事態のあまりの危急さをうまく想像できず、そのことに滅入る。夕方妻と娘と三人で車でユニクロへ買い物に行く。車中で「寒い」「腹減った」という意見が相次ぎ、「五風」という今まで入ったことのないファミレスか居酒屋のような店に入る。物凄い種類のメニューがあり面白くなる。鉄鍋餃子とミニ手巻き寿司、カレイの唐揚げと苺パフェという奇妙なオーダーをする。途中ライターのH氏から電話があり吉祥寺で取材が終わってこれから飲むという。後で三鷹の加賀屋で合流することに。3千円しか持っていなかったので食事代をカードで支払って、現金を飲み代にまわす。元ぴあのW氏と三人で久しぶりのモツ&ホッピー。W氏は先日念願の仲井戸麗市氏のインタビューが出来た喜びを語る。AMラジオの話しなど閉店まで。近所で飲めるのは本当に嬉しい。今週は殆ど仕事(お金になる)してないのに飲んでしまった。

投稿者 Ken Kitano : 23:35

2003年03月02日

3月2日 高野山、真言密教

朝の新幹線で大阪へ。大阪環状線、南海を乗り継いで高野山へ。高野山は海抜900メートルを越える仏都。雪はないが冷える。宿坊で寺の上智院に荷物を置いて一休み。今回はour faceプロジェクトの取材で真言密教の修業をされている僧侶の方々の撮影とインタビューをさせて頂く。先月熊野に神倉神社で御燈祭の撮影をした帰りに高野山に立ちより取材の申し込みをしていたのだ。暗くなって6時半に高野山専修学院へ。高野山には高野山高校、高野山大学があるが、ここ専修学院は真言密教の僧侶の修業の場である。一年間俗世との連絡を断って厳しい集団生活のなかで修業をする。特に二学期は厳しい行が行われ、昨年NHKが弘法大師の番組制作で例外的に取材を許されたが通常は取材は受けないのだという。なかに入ると意外にも生徒さんたちが明るく冗談を言っていたりして驚く。今回は35人の方が撮影をOKして頂けた。感謝。撮影の場所、ポーズ、などを生徒さんと相談して決める。できる限り「修業の」肖像として撮りたかったからだ。結局広間に合掌して座ってもらうことに決まる。生徒さんは座るとサッと表情が変わる。カメラの前に座った時の表情、特に目が人により全く異なり興味深かった。
 撮影の後数人にインタビューさせて頂いた。僧侶になると決めるまでのこと、修業を始める前と後ではどう変わったかなど伺う。興味深い。何人かのひとが「一人になって個と向き合って考えるのは豊かなことで、その経験をする時間がここに来るまで持てなかった」という意味のことを言っていた。
 ある寺のひとがour faceを見て「真言密教の教えに近いのではないか」と言った。一人のひとの輪郭ではなく無数の存在が奥の奥まで続くイメージ。個と全体を同時に見てゆくような眼差しがそうだと言う。確かに私のものの見方、リアリティの感じ方は大乗仏教的な要素がある気がする。私が写真を意識して撮り始めた時に感じたことは、個人は点のような小さな存在でそれは確かさである。そう感じられた時世界の存在をリアルに感じられた。(サイト「溶游する都市」のテキスト参照)以来、ものごとを見ようとする衝動そのものが、全体の中の一部というリアリティと、世界もまた個(部分)のなかにあるというリアリティを同時にもてるような方向を目指しているようだ。これは感覚的なことでは全くない。

投稿者 Ken Kitano : 23:36