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2004年09月13日
9月12日 原稿書き
昼間、雑誌の撮影。さる美しい俳優さんの撮影。帰って原稿書き。あまり進まない。
そうゆう時はなぜか本を読んでしまう。玄田有史著「仕事の中の曖昧な不安」(中央公論新社)を読んで目から鱗。資料として買ったんだけど一気に読んでしまった。著者は経済学者で雇用の現状について書かれた本。失業率が5%を越えて久しいが、よく話題に登る中高年の失業率は以前からあまり上がっていないという。(45〜54歳男性の失業率は3.6%、2001年9月)、失業率が急激に増えているのは15〜24歳を中心にした30代前半までの若年層(15〜24歳男性の失業率は12.4%、2001年9月)だそうだ。(多いのは中学卒、高校卒の人。日本の失業者の4人に3人が中、高卒者)人員削減のかわりに新規募集を辞める企業が増えたことによる。その結果、雇用機会の少ない若年者は自分の就きたい業種に就けず、就職しても早く転職する傾向が強まっている。新人が入って来ない職場では若年者の労働時間が過酷に増える傾向があるという。自分のスキルアップや結婚どころではない若年者の悲惨な現状が、数字をあげて分かりやすく書かれており、身の回りの20代30代の現状と重なる。また、パラサイトシングルと呼ばれる人を含む「非労働者」の中にも就職活動をしたがまったく就職できず活動を中断したり止めてしまった人が多く含まれているという。つまり中高年者が雇用を維持する代償として若年者の雇用と社会参加の機会を奪っている社会構造があるという。
一般に雇用問題では「パラサイト」とか「就業意識が薄い」とか「長続きしない」とか若年者に対する風当たりが強いけど、実際は年金と同じで若年者に負担が集中しているのだ。ということきちんという言う専門家があまりいないのは発言権を持った人たちが既得権を持った世代だからか。
後半、著者が頼まれて高校で講演する。私語の止まない高校生に向かって「夢をもつことよりも、もっと大事なのは”自分で自分のボスになる”という意志をはっきり持つことです」と語る一方「大学の先生っていくらもらえるの?」という質問に、躊躇し胸を張って答えられなかったことを悔やむ。
普段メディアに出てくる自信たっぷりで声が大きくて「わかりやすい」ことを言うタイプの”専門家”にない説得力があって面白かった。
投稿者 Ken Kitano : 2004年09月13日 14:47