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2008年09月10日
9月9日 写真に帰ってきてほしかった
9日の朝日新聞(東京)にも大きく取り上げられていましたが、13日までうちの近所の小平市中央公民館のギャラリーで落合由利子さんの写真展「働くこと育てること そして今」が開かれています。
僕はその企画に関わってきた。準備が遅れに遅れてやっと開場できたのは、なんだか奇蹟のようだ。
詳細はこちら↓。プレスリリースのために僕が書いた拙文も載っています。
http://www.kodaira-net.jp/units/36239/kodairamovie2007/
主催するのは僕も時々関わっている「小平で映画を見る会」という手弁当の市民組織(?)。年に1.2回映画作家を招いて上映会や講演会を開いている。今回は公民館のギャラリーを借りて映画ではないが写真家落合由利子さんの写真展とスライドトークをする。
今回、落合さんに写真展を持ちかけた理由は、僕としては昔から落合さんの写真を見てきて、メディアと一緒にやった依頼仕事だけではなく、写真家落合さんとしての個人の経験そのものとして生まれてきた写真を発表してほしかったし、それらの写真ときちんと本人に向き合ってほしかったからだ。メディアと一緒にした仕事というのは出版後各地から講演や写真展の以来が続いた「働くこと 育てること」と「絹ばあちゃんと90年の旅」の仕事である。
http://www.amazon.co.jp/働くこと育てること-落合-由利子/dp/4794508271/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1221012578&sr=8-1<
href="hhttp://www.amazon.co.jp/絹ばあちゃんと90年の旅―幻の旧満州に生きて-落合-由利子/dp/406213019X/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1221012578&sr=8-3" target="blank">http://www.amazon.co.jp/絹ばあちゃんと90年の旅―幻の旧満州に生きて-落合-由利子/dp/406213019X/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1221012578&sr=8-3
落合さんと最初にお会いしたのは僕が大学生の頃だ。僕はシリーズ「溶游する都市」を撮り始めたあたりだ。落合さんの日芸の卒業制作「ウインドディスパー」は、今も見た瞬間の心に風が吹き抜けるような感触が今も残っている。日本の都市の風景だったり、人だったり、海外の街や生活の場、人など、被写体は様々だった。正面から向き合う、ピュアな眼差しが眩しかった。勇敢な人という印象。フリーフロー的な撮り方が多かったと思うけれど、コンセプトを定めた見方も試みていたように思う。今思うと後に訪れる「感性で撮る」時代を先取りしていたような気もする。とっても力強い写真だ。
その後落合さんは何度か作品を発表する直前で足踏みしたまま、ベルリンの壁がくずれた直後の東欧諸国に行き、そこから落合さんの人生そのものが大きく変わって行ったように思う。後に落合さんが書いたテキストである。
「結婚、出産別居 時は思いもよらぬ方向へと流れて行く。一本足で立つような危うい状態の中、乳を含ませた赤ん坊が大きくなり、いとおしさと喜びで乳が沸き、また赤ん坊が大きくなる。命の循環 人間の営み 撮ることで自分を支えた日々。わからないものに向き合うために、写し続けた日々だった。(「はじまり 写し続けた日々」より一部)」
撮ることはいつもあったのだろうが、そこには写真はなかったというか、写真との距離はとても遠かったのではないかと推測する。
いくつもの不連続があって、時々の写真だけが別々に残って行った。多くの人を励ました「働くこと・・」や「絹ばあちゃん」の出版社との優れたドキュメンタリーの仕事だけでなく、僕はそれまでの落合さんの仕事部屋の片隅に置かれたそうした写真を並列に並べて人前に出してほしいとお願いした。言って見れば落合さんに「写真に帰ってきて」ほしかった。一人の人生だから、大変な作業だったと思う。実際いろんな意味で大変だったのだけど。眠っていた写真を日に当て、決して平穏ではなかったであろうその時々の自分と向き合って、ようやくひとつの写真展に着地した。200点弱の写真が展示してある。公民館でやる地域の草の根の写真展ではない規模と内容だと思う。
写真家なら常に一秒も休まずに向き合ってなければならない「なぜ写真を撮るのか、写真とは何か」という問いに、写真へ帰ってきた落合さんが再び向き合うきかっけになれば、僕としては嬉しいのだが。
子供が息をとめて世界を見つめるような静謐さのなかで時間が結晶している。
強くて、そして美しい写真をぜひ見にきて下さい。
投稿者 Ken Kitano : 10:47