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2009年11月24日

パリフォトおわり

終わりました。最終日はやはり大変な人でした。ぎりぎりでばたばたと商談もまとまったようで、まだ集計を聞いていないけれど、去年やおととし程ではないにしろ作品も結構売れたみたい。不況のなかがんばったほうじゃなじかな。思い切って作ったラージサイズが出てよかったです。自分でもいいプリントだと思ってたから。BMW賞は今年も落ちましたけど。

写真集、冷静に考えるて、5万円を越えるの本が売れると思います?(プリントつきのスペシャルエディションは480ユーロ)それが30冊ぜんぶ売れた(それに予約も)んだから、世の中間違ってないですよね〜。レギュラーエディションはまだ客の少ない2日目にほぼ完売したので、あれば持ってきただけ売れたと思う。今年、この写真集は大きなチャレンジでした。制作費回収のめどが発売と同時に見えてきた。上出来。

今年のパリフォトを見渡して感じたのは、(非常に素人的な感想だけど、)アメリカのギャラリーががくっと減った影響もあってか、例えば西海岸砂漠系的なアンドスケープや、例えば柴田敏雄さんのよう(お名前を例にして恐縮だけど)な人工的な景観のランドスケープ、あるいはドイツベッヒャー的なランドスケープなど、都市や人工的な風景が少なかった気がする。僕の作品でいうと、都市や人工物の風景もずいぶんあるのだけど、「溶游する都市」の木の写真やone dayの水辺の写真、それに定番のour faceなどに問い合わせも売約も集中した。なんとなくだけど、硬質なイメージよりもウエットで柔らかいものをもとめる空気があるのかな、と感じた。one day広島の原爆ドームの作品、広島の慰霊の人の肖像もずいぶん問い合わせや売約もあった。それがいまのヨーロッパの、あるいはヨーロッパから見える世界のありようなのではないか、とも感じた。

作品が売れるのはとても嬉しい、またお客さんが心から喜んで、そのひとにとってかけがえのないイメージとして作品をみているのが現場に来ると分かるので、それは作家にとって素敵な体験です。こっちの人は感情が率直だから。こうしてマーケットに乗せてもらえる前では考えられないこと。しかし、一方で思うのは、僕の作品はタブローとして1点でも見てもらって成立するのだけれど、our faceはいくつもの複雑なコンセプトとして成立している。例えば水平に連ねて展示することや、異文化や対立する人の存在が一本の線上に連なることなどなど。そうした展覧会で発表する機会を待たずに作品を売らないとならない今の僕の状況と言うのは、瀬に腹はかえられないので、仕方ないとはいえ、つらい。実際まだ展覧会未発表の去年や今年撮影制作のアジアの作品でエディションがつきつつあるものがいくつかある。

単に作家としての履歴をアップするというだけでなくて、この仕事は日本だけでなくて、アジア、アメリカ。ヨーロッパで複数の極を持ってできれば同時期に見てもらわなくてはならない。そうなる前に作品が手元からなくなってゆくというのは、たまらなく切ない。せいぜい外から声をかけてもらえるように、常に発信して、続けて行くしかない。へんな風に出ても困るから。

これからタイに向かいます。明日からまた撮影、撮影、撮影。かえったらすぐプリント、プリント。北京の準備。日本でのFlow and Fusionの発表、次の本の準備mtc。

みなさんお疲れさまでした。

投稿者 Ken Kitano : 17:05

2009年11月22日

4日目

今日はたくさん人が入った。
昨日に続いて朝作品の配置換えをしたらすっきりしていい空間になりました。そしたら、さっそく効果有り。(これって風水の才能?)
会場早々に写真集レギュラーエディションが持ってきた30冊完売した。マッチさん、本尾さんと握手。プリントつきのスペシャルエディションもあと少し。

はじめて会場を見た。アラブの作品、面白かった。

日本の写真の研究している方はけっこういて、フランスのキュレーターの方とVIVOの作家の話を少し。英語わかんないけど。

午後、サイン会。昨日と違ってちょっとサイン会っぽかった。時間になると人が来て軽く人垣めいたものができました。学生だから作品も写真集も買えないけど、応援してるから一緒に写真とってくれ、とかも。

あとでウィリアムクラインのサイン会の前をとおったら50倍くらい人がいた。いい感じのおじいちゃんだった。

投稿者 Ken Kitano : 18:04

2009年11月21日

3日目

今日は週末で人も多かった。
お客さんのお財布のひもは固め。

ギャラリーのアシスタントとこれは風水的に(知らないけど)よくない、と気休めに作品を入れ替えたら(ヒマだったので)、それがすぐに売れた。やってみるものです。まあ、そんな感じ。

写真集は完売目前です。レギュラーはあと2冊、プリントつきも半分を切りました。サイン会っていっても今年は放送もなにもないからその時間に誰も来ない。お客さんが来たら電話で呼び出されてサインする、みたいな感じ。町口さんとふたりで腰掛けて、「指名のかからないキャバクラ嬢も味わい深くていいじゃない」なんてお茶をひいていた。

Mに本を見に来る人とMEMにプリントを見に来る人では少し違っていて、プリントお客さんは立ち止まって、じっくり作品をみて、写真集に気がついて、見入ってえんえん感想を話して、本だけ買って帰る、そうゆう人ばっかり、です。ありがたいけど。
ひとり「ワタシが人生でいままで見た本の中で一番すばらしい本だわ」、って言って買わないで帰った人もいましたけど。椅子から落ちそうになった。

投稿者 Ken Kitano : 15:24

2009年11月20日

2日目

朝、雲が厚かったので撮影はあきらめて(内心ほっとして)ホテルの近所のコインランドリーで洗濯をしていたら、にわかに晴れ渡ってきたので、急いで機材を持ってタクシーで撮影にでた。今日はあったかかったから助かった。セーヌ川沿いでone day撮影。

夕方フェア会場に行った。一般公開は今日が初日。
どうなんだろう、僕は去年しかみていないけれど、ちゅっと人が少ない、かなあ。商談風景も少ない気がする。もちろんパリフォトだからあちこちやっているけど。リーマンショック直後だった去年よりもやっぱり全体に低調なのかな。もちろん毎年いいとは限らない。去年の100が今年ゼロにもなるのがマーケットなのだろうけど。ゆっくりだけど、少しずつ決まっている。大きいのも1点出たのでよかった。大きい作品はシッピングも額もかかっているから、持って帰るののタイヘンなのだ。

写真集は好調で、明日と明後日のサイン会を前に品切れの可能瀬が高まってきた。どうしよう。
わざわざサイン会に来てくれてかんじんの写真集が品切れでは申し訳ないよな。町口さんのブースはもう僕の本は棚から下げている。

熊谷聖司さんと少しだけフェア会場を見て回った。中南米の作家を扱っているギャラリーがあって、フロールガルデューノのプリントがあった。いいねえ。

投稿者 Ken Kitano : 16:47

2009年11月19日

パリフォト初日

7時過ぎ、地下鉄を乗り継いで夜明け前にセーヌ右岸の撮影スポットへ。
晴れたのでone dayの撮影。行く途中、高台からエッフェル塔の後ろから朝焼けの空のパリの街が美しかった。
日没までone day撮影。雲がかかったり、太陽が出たり。やっぱり雲が多いのと川風が思いのほか強かったのが心配。
晴れたらもう一日撮り直したい。9時間。寒かった。疲れてしまって部屋に戻ったら、しばらく動けなかった。

夜パリフォトの会場へ。初日はVIPやコレクター招待日。すごい人、人、人。
入り口をはいってすぐのbook shop Mをのぞいたら、本尾さんが「北野さんの写真集もう5冊売れたよ」と嬉しいお知らせ。写真集は好調だった。MEMとbook shopMをあわせて初日で20冊くらいでたみたい。55冊しか持ってきてないから、足りなかったらどうしよう。写真集FLOW AND FUSIONは、レギュラーエディション(ed.400)が180ユーロ(22000円くらい)。オリジナルプリントつきのスペシャルエディション(ed.100)が480ユーロ(62000円くらい)。コレクターアイテム的特装本では買いやすい値段なのかもしれない。手に取ったお客さんは本のクオリティにびんびん反応してくれている感じがある。分かってくれるのが嬉しい。手応えありで、してやったり。

プリントも数点動きがあったみたいだけれど、本に連動してプリントも動いてくれるといいな。
会場で北京三影堂撮影芸術中心のロンロンさんと再会。
今日は疲れて目が開きません。今日は会場を見る気力なし。明日にします。

ちなみにパリで写真集「FLOW AND FUSION」を最初に買ってくれたのはルーリードだった、と後で町口さんに聞いたのだけど、僕はルーリードを知らなくて、「誰ですか、そのひと?」と言ったら、その場にいたひと全員が「エエー!」と驚かれた。ホテルの帰ってすぐにウィキペディアで調べました。有名なミュージシャンなんですね。

投稿者 Ken Kitano : 16:39

2009年11月18日

11月17日  パリに

昨日の早朝パリについた。
思ったより寒くない。思っていた通りの曇天。
帰りにタイに寄るのでタイ国際航空のバンコク経由、合計18時間のフライトだった。
古いジャンボの機中は南の島で過ごしたフランス人で満席だった。

ホテルに荷物を置いてone dayのロケハン。セーヌ右岸の目星をつけておいた場所を歩いた。2カ所いい場所をみつけて、今朝ポラでテスト撮影。パリの重たい曇り空は好きだけど、滞在中、太陽がでてほしい。予定している撮影は太陽が出ないと話にならないのだ。午後ポンピドーセンターに行った。ナンゴールディンのスライドがよかった。

というわけで、いまパリにいます。
今日はパリフォトの設営。作品の設置が一段落したので、MEMのブースでいまこれを書いています。
見渡すとあちこちで、去年とは違うさまざまな作品が壁にかかり始めています。ちょっと見ただけで、やっぱりいろんな作品がある。ということはいろんな作品をいいと思う人がいる、いろんな作品を買う人がいる、ということ。1920年代のビンテージからエッジのたったの、伝統的なの、写真の枠をはみ出したのなど。写真てまだまだやれることがたくさんあると改めて思う。この世界にはと〜ても広い広い写真の幅があって、そこに自分のような作品にも少しだけ居場所があるということ(フェアにエントリーしているというだけの意味ではなくて写真てものに)、そのことを感じて嬉しくなる。連綿と続く写真の連なりがここに来ると少しだけ見渡せる。

思えば去年は行きの飛行機は、アウェイに乗り込むような心細さだった。でもパリについてみたら、とにかく広いくて濃密な写真の幅があって、それを大切にするひとがわんさかいて、「あ、こっちがホームじゃん」って思った。そんな話を前に町口さんに話したら、「おれも同じだった」と意気投合。で、また今年も来ています。今年はそんな町口さんと作った写真集を持って。

明日から4日間、どんな人が来るのだろう。
日本以外は少し前に景気が底を打ったというけれど、ということはリーマンショック直後の去年のパリフォトよりもまだ悪いということ。ぜんぜん分かんない。けど、悪いなりに成果がありますように。とにかくここには「写真」があります。

投稿者 Ken Kitano : 03:18

2009年11月11日

もうすぐ

もうすぐパリフォト。

一昨年からいまのギャラリーMEMに作品を扱っていただくようになって以来、11月のパリが一年の節目のようになった。今年は写真集「FLOW AND FUSION/溶游する都市」をパリで発表する。春から町口さん、本尾さんとパリを合言葉に準備してきた。パリに集まる目の肥えたコレクターさんからどんな反応があるだろうか。「FLOW AND FUSION」は町口さんのbook shop MとMEMと両方のブースでプレゼンします。両方でサイン会もする、予定。
「溶游する都市」は新しいセレクトのニュープリント32点とロール紙のラージサイズを4点を焼いた。これでやっと僕の中で90年代を総括できた気がする。2010年代に持ち越したくなかった。(このシリーズは昭和天皇が崩御した1989年に始まった。地震とサリン事件のおきた95年頃までハイテンションで東京を撮り続け、その後だんだんと酸欠になっていくみたいに失速した。写真集におさめた写真の一番最後のはたしか97年撮影だった。これで僕はやっと90年代を置けた。)

パリでは新作のone dayがスポンサー賞にノミネートされている。新作と旧作を別の形でお見せできるのが嬉しい。

作品と写真集の発送を済ませたので僕のパリの準備は少し前に一段落した。
今は来年北京で実現させたいプロジェクトの準備でばたばたしている。これは実現できれば価値のある仕事になる。なんとか実現させたい。パリへ発つ前に済まさなければならないことがまだもろもろ。作業をしていると深夜に本尾さんから確認や打ち合わせのメールが入る。みんな仕事してるな〜。緊張感。緊張感。

来週のいま頃はパリで、その次の週は帰りに寄るタイ北部をうろついているはず。戻るとすぐ12月で、あっというまに年末を迎えるだろう。
ただただ、1点でも多く作品を残したい。


PARIS PHOTO NOV.19~NOV.22
http://www.parisphoto.fr/#

MEM (C4)
http://www.mem-inc.jp/

I announce a new photograph book "FLOW AND FUSION".
BOOK SIGNING at PARIS PHOTO 2009
Friday November 20 3:00PM- bookshop M (Stand C4)
Saturday November 21 3:00PM- MEM (Stand B39)

投稿者 Ken Kitano : 21:09